IKTT「伝統の森」に宿泊させてもらった。ガイドブックには載っていない、カンボジアの奥深い体験だった。
伝統の森との出会い
この時、旅の記録が3日間途絶えていた。理由は単純で、Wi-Fi環境が一切なかったからだ。その間何をしていたかというと、IKTT 伝統の森に宿泊をさせてもらっていたのだ。
恥ずかしながら森本喜久男さんのことは知人からの情報で4日前に知った。調べてみると、自分の泊まっているホテルからシェムリアップの本部まで550mぐらいの距離だったのでお伺いさせてもらったところ、伝統の森のゲストハウスが開いているとのことだったので1泊させてもらうことにしたのだ。結局2泊3日にしたが。
シェムリアップからゲストハウスまでトゥクトゥクで約1時間、金額は片道約25ドルだった(2016年当時)。次の日もお願いをするという条件で価格交渉し、往復で45ドルにしてもらった。
今思えば、あの時たまたま知人から聞いた情報がなければ、この場所を知ることはなかった。旅先で人と繋がることの大切さを改めて実感する出来事だった。
森本喜久男さんと「伝統の森」とは
森本さんのやってきたことについては下記書籍を見てもらうとわかると思う。
簡単に説明すると、森本喜久男さんは京都の友禅職人出身で、内戦で失われかけたカンボジアの伝統的な絹織物「クメールシルク」を復興するために、2003年にシェムリアップ郊外に「伝統の森」という村を作った人物だ。村では蚕の飼育から糸紡ぎ、自然染色、機織りまで、すべての工程を昔ながらの手法で行っている。
IKTT(クメール伝統織物研究所) は森本さんが設立したNPOで、カンボジアの伝統工芸を守りながら、村の人々の自立を支援している。
日本人がカンボジアの奥地に村を作り、伝統工芸を復興させている。スケールが違いすぎて圧倒された。自分が何をやっているのかと考えさせられる体験だった。
ゲストハウスでの生活
伝統の森には女性の日本人スタッフが一人いた(みどりさん)。自称「かわいい女の子をつれてくるのは得意」というめっちゃ男気あふれる方で、夜はこの方と飲むのが楽しみだった。
夜ご飯の後は12時頃までゲストハウスに泊まっている様々な国籍の方とみどりさんも交えて談笑する。10時以降は電気がないので、携帯の明かりや懐中電灯で照らしながら談笑をするのだ。
集まるメンバーは様々で、製薬会社で役職ありのドイツ人、フリーのカメラマンでドキュメンタリー映画を撮っている日本人、染め物の勉強をしているアメリカ人など。話してみると基本少し変わっている人が多かった。
みどりさん曰く、「去年は1500人がこの村に訪れたが泊まったのは1%(15人)であり、変なやつしか泊まらないよね」とのこと。毎日事件や変わった出来事が起こるのだ。
電気のない夜に、懐中電灯の明かりだけで飲みながら語り合う。スマホもSNSも関係ない、人と人が向き合う時間だった。今の時代、こんな体験ができる場所はほとんどないだろう。
村の暮らしと伝統工芸
村の方々は午前は7時〜11時、午後は13時〜17時まで働いていた。日本人が近くに来て、作業を見ることや写真を撮ることには慣れっこである。



びっくりしたのが、村の小さい子供から大人まで日本語を結構話すのだ。もちろんこの村で日本語を教えていることもあるが、観光客とのコミュニケーション上、日本語を話せた方が楽しいということを知ったかららしい。
自分のTシャツを染めてみた
僕のユニクロとタイのナイトマーケットで買ったTシャツを染めてもらった。元の色はグレーと白のTシャツだ。



自然染色で30分ほど煮て、鮮やかな黒の出来上がり!化学染料の黒とは全く違う、深みのある色だった。

グレーのTシャツは東南アジアには向かないのだ。汗がめっちゃにじむので、どうにかしたいと考えていたのでこれで完璧! 次の日に着たけど、いい感じだった。
自然の素材だけで、こんなにきれいな黒が出せることに驚いた。化学染料では出せない温かみのある色。森本さんが守ろうとしている技術の価値を、自分のTシャツを通して体感できた瞬間だった。
IKTT「伝統の森」訪問ガイド(2026年現在)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | シェムリアップ郊外(市街地からトゥクトゥクで約1時間) |
| 宿泊 | ゲストハウスあり(要事前連絡) |
| 公式サイト | IKTT クメール伝統織物研究所 |
| 見学 | 日帰り見学も可能(午前・午後の作業時間帯がおすすめ) |
| 注意点 | Wi-Fiなし、夜間は電気なし。懐中電灯を持参すること |
| アクセス費用 | トゥクトゥクで片道25〜30ドル程度(2016年当時) |
森本喜久男さんは2017年に逝去された。しかし伝統の森は現在もスタッフと村の人々によって運営が続けられている。森本さんの志は確実に受け継がれているのだ。
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つづく。